(最終更新日:2022年3月10日)
✔このような方へ向けて書かれた記事となります
「日本の取引所が発表したトラベルルールって何?」
「トラベルルールの概要・目的・必要なことまとめて知りたい!」
「ズバリ今後はどうなるの?」
✔当記事を通じてお伝えすること
- トラベルルールとは?その目的は?
- いつから始まるの?
- 各取引所は何をしなければならないの?
- 今後についての考察
✔当記事の信頼性
2022年3月9日16:35に登録しているbitbankから届いたメールに続いて、同日連続で3取引所からトラベルルールについてのメールが届きました。
bitbank

コインチェック

zaif

主には、一般社団法人日本暗号資産取引業協会が2022年3月1日に発表したニュースによる「一般顧客向けの周知文」がベースとなっています。

これを機に、7ページに渡りギッシリ書かれている文書を精読し、各社の発表と少し異なる点などを発見しました。
実際の文書を引用しながら、トラベルルールについての概要や各取引所の対応、今後の流れを見ていきます。
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トラベルルールとは?

日本暗号資産取引業協会は、トラベルルールについて下記の通り発表しています。
トラベルルールとは、「利用者の依頼を受けて暗号資産の送付を行う暗号資産交換業者は、 送付依頼人と受取人に関する一定の事項を、送付先となる受取人側の暗号資産交換業者に 通知しなければならない」というルールです。
https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/202203-travel_rule.pdf
つまり、「暗号資産(仮想通貨)取引所は、通貨を送金する際に、あなたと通貨の受取人に関する情報を、送金先の取引所に通知しなければならなくなった」ということになります。
FATF※が、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策の一環として各国の規制当局に対して導入を求めており、テロリスト等の犯罪者が自由に資金移動をすることを防ぐというのが目的です。

FATFとは、マネーロンダリングやテロリストへの資金供給を防ぐ為の対策を取りまとめている国際組織の名称です。
トラベルルールはいつから?

対応開始が2022年4月1日と言及されています。
この「対応開始」については、Coincheckからのメールでは、下記のように記されています。
全ての暗号資産交換業者における通知システムの準備の都合上、実際の通知開始は対応開始日以降となり、現時点では未定となっております。
出典:2022年3月9日 Coincheckより送られてきたメール本文
つまり、今回はあくまでも対応開始であって、通知開始ではありません。
「2022年4月1日より通知義務に向けて動き始めますよ」という発表です。
ただし、遅かれ早かれ各取引所は一定の情報を扱う必要があります。
まずはその内容を見ていきます。
トラベルルールで必要な一定の情報とは?

現状では、日本暗号資産取引業協会の発表と各取引所の発表では異なる点も見られます。
ただ、間違いなく日本暗号資産取引業協会の発表の方向に向かっていきますので、まずは協会の発表から見ていきましょう。
日本暗号資産取引業協会の発表
主に「情報取得義務」、「通知義務」と「暗号資産移転取引のリスク評価義務」の3点を取引所に求めています。
情報取得義務
通貨の送金依頼を受けた業者は、依頼者から下記の情報を取得する必要があります。
- 送付依頼人情報(氏名、住所又は顧客識別番号)
- 受取人情報 (氏名、送付先暗号資産アドレス、住所に関する情報)
- 受取側暗号資産交換業者の有無
- ある場合はその名称
- 取引目的等に関する情報
ただし、経過規定によると、①受取人の住所に関する情報②取引目的等に関する情報の取得は、本年の 10 月1日からとなっています。
通知義務
依頼を受けた暗号資産移転取引が、「要通知取引」(受取側暗号資産交換業者が国内の暗号資産交換業者またはトラベルルールを導入している外国に所在する外国暗号資産交換業者 である取引)である場合は、以下の情報(必須情報)を受取側暗号資産交換業者に通知し、 自ら保存しなければなりません。
・送付依頼人情報 (氏名、住所又は顧客識別番号、送付(出力)に用いた暗号資産アド レス)
・受取人情報 (氏名、送付先暗号資産アドレス)
ただし、経過規定により、本年4月1日から本施行日までは、「要通知取引」のうち、以 下の要件をすべて満たす取引(「経過規定対象要通知取引」)についてのみ通知義務が課せら れます。
① 受取人と送付依頼人が同一である。
② 国内の暗号資産交換業者が受取側暗号資産交換業者である。
③ 送付する暗号資産が BTC または ETH である。
④ 送付する暗号資産の邦貨換算額が 10 万円を超える額である。
https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/202203-travel_rule.pdf
詳しくは当記事の後半で解説していますが、ここでは通知義務は、送付先の取引所に①送付依頼人情報②受取人情報を通知する必要がある、ということを覚えておきましょう。
暗号資産移転取引のリスク評価義務
依頼を受けた暗号資産移転取引が、「要通知取引」に該当しない取引(通知不要取引)で ある場合(例えば、暗号資産を受取人のプライベートウォレットに直接送付する場合、受取 側暗号資産交換業者がトラベルルールを導入していない国の業者である場合)は、情報の通知は必要ありませんが、当該移転取引のリスクを個別に評価し、依頼の諾否を判断しなけれ ばなりません。 ただし、経過規定により、本年4月1日から本施行日までは、かかるリスク評価の義務は 努力義務とされています。
https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/202203-travel_rule.pdf
こちらも同じく当記事の後半で解説しています。今のところは各取引所の発表では触れられていませんのでここでの説明は割愛します。
各取引所の発表
各取引所では、上記3つのうち「情報取得義務」のみについて発表されています。
取得対象と取得する情報はそれぞれ下記の通りです。
Coincheck
対象者はすべての顧客(個人・法人含む)です。
新たに取得・保存する情報(2022年4月1日時点)は下記の2つになります。
- 受取人が送付依頼人本人か否か、送付依頼人本人でない場合は受取人の氏名(法人の場合は名称)
- 受取暗号資産交換業者等の名称
bitbank
対象者はすべての顧客(個人・法人含む)です。
暗号資産の出金(送付)時に下記情報が新たに取得、保存されます。
- 受取人が送付依頼人本人か否か、送付依頼人本人でない場合は受取人の氏名(法人の場合は名称)に関する情報
- 出金先の暗号資産交換業者等の名称
Coincheckとほぼ同様の内容です。
zaif
対象者はすべての顧客(個人・法人含む)です。
お客様が暗号資産の外部送付を行う際に下記情報が新たに取得、保存されます。
- 送付依頼人情報(氏名、住所又は顧客識別番号)
- 受取人情報 (氏名、送付先暗号資産アドレス)
- 受取側暗号資産交換業者の有無・ある場合はその名称
Coincheckとbitbankとは違い、zaifは送付依頼人情報(氏名、住所又は顧客識別番号)も対象としています。
他所でもこのように多少異なる扱いも考えられるので、注視しておく必要があります。
今後についての考察

各取引所で共通している点は、下記のとおりです。
- 2022年4月1日より対応を開始
- 「情報取得義務」、「通知義務」と「暗号資産移転取引のリスク評価義務」のうち「情報取得義務」のみの発表
しかし、今後を考える上では日本暗号資産取引業協会が発表している内容に近づいていくことはほぼ間違いないと思われます。
現在思いつく限りでの懸念点と日本暗号資産取引業協会が発表している文書を照らし合わせていきます。
受取人の情報をどこまで開示しないといけないのか?
現状、受取人について情報取得義務があるものとしては、①受取人の氏名②受取人のために暗号資産の送付を受ける暗号資産交換業者(受取側の暗号資産交換 業者の有無③受取側の暗号資産交換業者が有る場合はその名称、の3つです。
ただし、下記のようにも書かれています。
なお、本年 10 月1日以降は、受取人の住所に関する情報及び移転取引目的等に関する情報の申告もあわせて求められることになりますが、申告を求められる事項の詳細については現時点では未定であり、決まり次第お知らせいたします。
https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/202203-travel_rule.pdf
つまり、2022年10月1日以降は、更に①受取人の住所に関する情報②移転取引目的等に関する情報も求められており、実際の詳細は明らかになっていません。
通知義務について
通知義務については、現状取引所からの発表はありません。
ただ施行されることを前提に内容を見ていきます。
通知義務は、「要通知取引」である場合にのみ、①送付依頼人情報②受取人情報(氏名、送付先暗号資産アドレス)を通知、自ら保存する必要があると言われています。
要通知取引とは、公式文書では下記の通りに記されています。
「要通知取引」(受取側暗号資産交換業者が国内の暗号資産交換業者またはトラベルルールを導入している外国に所在する外国暗号資産交換業者である取引)
https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/202203-travel_rule.pdf
つまり、受取人側の取引所が、国内の暗号資産取引業者、もしくはトラベルルールを導入している外国に所在する外国暗号資産業者である場合のことを指しています。
取引所では発表されてないものの、日本暗号資産取引業協会からは、2022年4月1日から本施行日までは下記の条件を満たす取引について通知義務が課される旨が発表されています。
- 受取人と送付依頼人が同一である。
- 国内の暗号資産交換業者が受取側暗号資産交換業者である。
- 送付する暗号資産が BTC または ETH である。
- 送付する暗号資産の邦貨換算額が 10 万円を超える額である。
ただし今のところそこまで制限は強くないので、そこまで大きく取引の弊害にはならないと考えられます。
暗号資産移転取引のリスク評価義務について
プライベートウォレット含めたトラベルルールを導入していない暗号資産業者への送金の場合は次の「リスク評価義務」が課されています。
依頼を受けた暗号資産移転取引が、「要通知取引」に該当しない取引(通知不要取引)で ある場合(例えば、暗号資産を受取人のプライベートウォレットに直接送付する場合、受取 側暗号資産交換業者がトラベルルールを導入していない国の業者である場合)は、情報の通 知は必要ありませんが、当該移転取引のリスクを個別に評価し、依頼の諾否を判断しなけれ ばなりません。 ただし、経過規定により、本年4月1日から本施行日までは、かかるリスク評価の義務は努力義務とされています。
https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/202203-travel_rule.pdf
要約すると、本年4月1日から本施行日まではあくまでも努力義務で、内容としては、送付元の取引所は送付先について個別に評価した上で、送金の可否を判断する、と言った内容になります。
もちろん、「プライベートアドレスには送付が一切できない」と判断する可能性はあるものの、数ある取引所で全てが足並み揃えて同じルールを徹底しない限り、制約が強すぎる取引所は使用者が減少してしまう可能性もあります。
我々としては、使用している取引所がどのような方針を打ち出してくるのかを見極めていく必要がありそうです。
まとめ

当記事の内容をまとめます。
日本暗号資産取引業協会は、会員(国内の取引所)に下記の3つを求めています。
- 情報取得義務
- 通知義務
- 暗号資産移転取引のリスク評価義務
ただし、現状(2022年3月時点)で発表となっているのはそのうち「情報義務」のみです。
また、あくまでもトラベルルールとは、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策を目的とした、「利用者の依頼を受けて暗号資産の送付を行う暗号資産交換業者は、 送付依頼人と受取人に関する一定の事項を、送付先となる受取人側の暗号資産交換業者に通知しなければならない」というルールです。
正しく取引をしている限りはそこまで影響は無いのではという印象です。
ただし、分散型の取引所やウォレットを使用している場合は、「暗号資産移転取引のリスク評価義務」に該当してしまう場合があります。
暗号資産移転取引のリスク評価義務については、各取引所の方針を注視しておく必要があり、場合によっては、制限の少ない取引所を検討する必要が出てくる可能性もあります。
今できる準備としては、情報収集はもちろん、複数の取引所で口座を持っておくことが将来のリスク回避に繋がることでしょう。
もしまだ「1つだけしか口座を持っていない」方は、口座の解説から実際に取引ができるまで時間もかかるので早めに複数の口座を持っておくことで来るべく将来へ備えておきましょう。
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